バセドウ病とは
バセドウ病とは
バセドウ病は、甲状腺を必要以上に刺激する自己抗体ができることで、甲状腺ホルモンが過剰につくられる自己免疫性の甲状腺機能亢進症です。
日本甲状腺学会の診断ガイドラインでも、TSH受容体に対する刺激型自己抗体によって甲状腺ホルモンの産生・分泌が亢進する病気と定義されています。
甲状腺は首の前にある小さな臓器ですが、体の代謝、心拍、体温、発汗、筋肉、気分、腸の動きなど、全身に大きく関わっています。
そのためバセドウ病では、単に「甲状腺の病気」というだけでなく、全身にさまざまな症状が出ることがあります。
どんな症状が出ますか
バセドウ病では、甲状腺ホルモンが多くなりすぎることで、次のような症状がみられます。
- 動悸、脈が速い
- 体重減少
- 手のふるえ
- 汗が増える、暑がりになる
- 疲れやすい
- イライラしやすい
- 下痢気味になる
- 筋力低下
- 月経異常
- 首の前の腫れ(甲状腺腫)
- 眼球突出、まぶたの腫れ、目の違和感 など
日本甲状腺学会の診断ガイドラインでも、頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加などの甲状腺中毒症状、びまん性甲状腺腫大、眼球突出や特有の眼症状が代表的な所見として挙げられています。
さらに、バセドウ病は甲状腺眼症の主な原因疾患でもあります。
ただし、症状の出方には個人差があります。
「食欲はあるのに体重が減る」、「最近ずっと脈が速い」、「疲れているのに眠れない」、「更年期かと思っていた」などの形で気づかれることもあります。
バセドウ病の原因
バセドウ病は、免疫の異常によってTSH受容体抗体(TRAb)などの自己抗体がつくられ、甲状腺が刺激され続けることで起こります。
つまり、細菌やウイルスが直接の原因というより、自分の免疫が自分の甲状腺を刺激してしまう病気です。
はっきりした原因がひとつに決まるわけではありませんが、体質的な要因に加えて、喫煙などが関与することがあります。
特に喫煙は、バセドウ病そのものや甲状腺眼症に悪影響を与えることが知られています。
どのように診断しますか
診断では、まず採血で甲状腺ホルモンとTSHを調べます。
バセドウ病では一般に、
- TSHが低い
- 遊離T4、遊離T3が高い
- TRAbまたはTSAbが陽性
という所見がみられます。
また、必要に応じて、
- 甲状腺超音波検査
- 放射性ヨウ素摂取率測定やシンチグラフィ
- 心電図
- 眼症の評価
などを行います。
American Thyroid Associationの一般向け情報でも、TRAb/TSI測定が陽性なら診断確認に有用で、必要時には放射性ヨウ素摂取率測定や超音波による血流評価が役立つとされています。
似た病気との違い
甲状腺ホルモンが高い病気は、すべてがバセドウ病ではありません。
たとえば、無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎でも甲状腺ホルモン高値になることがあります。
そのため、診断では「甲状腺ホルモンが高いか」だけでなく、抗体の有無や甲状腺へのヨウ素取り込みなどをみて、原因を見分けることが大切です。
バセドウ病の治療
バセドウ病の治療には、大きく分けて次の3つがあります。
1. 抗甲状腺薬
甲状腺ホルモンの合成を抑える薬です。
代表的にはメチマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)があります。
一般にはメチマゾールが第一選択になりやすく、妊娠初期など一部の状況ではPTUが使われることがあります。
抗甲状腺薬は、甲状腺機能を整えるための基本的な治療ですが、服用開始後しばらくしてから効果が出てくるため、すぐに症状が消えるわけではありません。
平均的な治療期間は1〜2年程度とされることが多く、状態によってはより長期に続けることもあります。
2. 症状をやわらげる薬
動悸、ふるえ、不安感などが強いときには、β遮断薬を使って症状を和らげることがあります。
これは甲状腺ホルモンを減らす薬ではありませんが、つらい症状の改善に役立ちます。
3. アイソトープ治療(放射性ヨウ素治療)や手術
薬で十分にコントロールできない場合、再発を繰り返す場合、副作用がある場合などには、放射性ヨウ素治療や甲状腺手術が検討されます。
どちらも有効な治療ですが、治療後には甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモン薬の補充が必要になることが少なくありません。
放射性ヨウ素治療は妊娠中・授乳中には行えず、また甲状腺眼症を悪化させることがあるため、患者さんごとの状況に合わせて選択します。
薬の副作用で注意が必要なこと
抗甲状腺薬では、発疹などの軽い副作用のほか、まれに無顆粒球症や肝障害など重い副作用が起こることがあります。
そのため、治療中に
- 発熱
- のどの強い痛み
- 強いだるさ
- 黄疸
- 食欲低下
- 皮疹
などが出た場合は、早めに医療機関へ相談が必要です。
甲状腺眼症について
バセドウ病では、甲状腺だけでなく目の周りに炎症が起こり、眼球突出、まぶたの腫れ、目の乾き、まぶしさ、複視などが出ることがあります。
眼症は甲状腺の数値だけでは十分に説明できないこともあり、必要時には眼科と連携して評価・治療します。
特に喫煙は眼症を悪化させやすいため、禁煙がとても重要です。
妊娠を考えている方へ
バセドウ病は、妊娠前や妊娠中の管理がとても重要な病気です。
甲状腺機能が不安定なまま妊娠すると、母体にも胎児にも影響することがあるため、妊娠希望の方は事前に治療方針を相談することが大切です。
治療薬の選び方も妊娠時期によって異なります。
一般に、妊娠初期はPTUが選択されることがあり、その後メチマゾールへ切り替えることがあります。
こんなときは受診をご検討ください
- 動悸や頻脈が続く
- 汗が多い、暑がりになった
- 食欲があるのに体重が減る
- 手がふるえる
- 首の前が腫れている
- 目が出てきた感じがする
- 健診で甲状腺機能異常を指摘された
- 甲状腺の病気を家族に指摘されたことがある
バセドウ病は、適切に診断して治療すれば、コントロール可能なことが多い病気です。
一方で、放置すると不整脈、体重減少、筋力低下、骨への影響、眼症の悪化などにつながることがあります。
気になる症状があれば、早めの受診が大切です。
参考文献
- 日本甲状腺学会. 甲状腺疾患診断ガイドライン2024.
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Graves’ Disease.
- American Thyroid Association. Graves’ Disease.
- Mayo Clinic. Graves’ disease: Diagnosis and treatment.
- NHS. Overactive thyroid (hyperthyroidism) - causes.
- Hoang TD, et al. 2022 Update on Clinical Management of Graves’ Disease and Thyroid Eye Disease.
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