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妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて見つかる「糖尿病まではいかない糖代謝異常」です。
妊娠が進むと、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、血糖値が上がりやすくなります。
とくに妊娠24~28週ごろに見つかることが多く、症状がほとんどないまま妊婦健診で指摘されることも少なくありません。

妊娠中の糖代謝異常には3つの分類があります

妊娠中にみつかる高血糖は、ひとまとめではありません。
日本では、次の3つに分類して考えます。

1. 妊娠糖尿病(GDM)

妊娠中にはじめて見つかった、糖尿病に至っていない糖代謝異常です。
最も多いタイプで、このページの主な対象です。

2. 妊娠中の明らかな糖尿病

妊娠中に見つかったものの、血糖の異常がより強く、通常の糖尿病を強く疑う状態です。
妊娠前から見逃されていた糖尿病や、妊娠中に発症した1型糖尿病などが含まれることがあります。分娩後に改めて、非妊娠時の基準で再評価が必要です。

3. 糖尿病合併妊娠

妊娠前からすでに糖尿病と診断されている方の妊娠です。
日本では、妊娠前に診断済みの糖尿病、または確実な糖尿病網膜症がある場合がこれに含まれます。
妊娠糖尿病よりも慎重な管理が必要です。

なぜ妊娠中に血糖値が上がるのですか

妊娠中は赤ちゃんを育てるために代謝が大きく変化します。
その一方で、胎盤ホルモンの影響でインスリン抵抗性が強まり、血糖値が上がりやすくなります。
もともとインスリン分泌が十分でない体質の方では、妊娠後半に血糖コントロールが追いつかなくなり、妊娠糖尿病として表面化します。

妊娠糖尿病になりやすい方

次のような方は、妊娠糖尿病のリスクが高いとされています。

  • 肥満
  • 糖尿病の家族歴
  • 高齢妊娠
  • 巨大児(4.5 kg以上など)出産の既往
  • 過去の妊娠糖尿病
  • 耐糖能異常を指摘されたことがある方

ただし、これらに当てはまらなくても妊娠糖尿病になることはあります。
だし、ハイリスクの方だけを調べると見逃しが起きるため、日本のガイドラインでは全妊婦を対象にスクリーニングする方針です。

どのように見つかりますか

日本では、妊娠初期と妊娠中期の2回に分けてスクリーニングする二段階法が広く用いられます。
妊娠初期は「妊娠中の明らかな糖尿病」を見逃さないこと、妊娠中期はインスリン抵抗性の増加に伴う妊娠糖尿病を見つけることが主な目的です。

妊娠初期のスクリーニング

妊娠初期には、随時血糖でスクリーニングを行います。
カットオフ値は95 mg/dLまたは100 mg/dLなど、施設ごとに設定されることがあります。
異常があれば、75g OGTTやHbA1cなどで詳しく評価します。

妊娠中期の50g GCTとは

妊娠24~28週ごろには、50g GCT(50gグルコースチャレンジテスト)が行われることがあります
これは、ブドウ糖50gを飲んで1時間後の血糖値をみる検査です。
日本の産婦人科診療ガイドラインでは、1時間値 140 mg/dL以上を陽性として、次に75g OGTTへ進みます。
妊婦健診の流れの中で行いやすく、産婦人科で広く使われているスクリーニング検査です。

妊娠糖尿病の具体的な診断基準

妊娠糖尿病の診断は、75g OGTTで行います。
次のうち1つでも満たせば妊娠糖尿病と診断されます。

  • 空腹時血糖値 92 mg/dL以上
  • 1時間値 180 mg/dL以上
  • 2時間値 153 mg/dL以上

妊娠中の明らかな糖尿病の診断基準

次のいずれかを満たす場合は、妊娠中の明らかな糖尿病として扱います。

  • 空腹時血糖値 126 mg/dL以上
  • HbA1c 6.5%以上

また、随時血糖 200 mg/dL以上または75g OGTT 2時間値 200 mg/dL以上の場合には、この病態を念頭に置いて追加確認を行います。

妊娠糖尿病で心配されること

お母さんの血糖値が高いと、赤ちゃんにも影響が及びます。
母体では妊娠高血圧症候群、羊水量異常、難産など、赤ちゃんでは巨大児、新生児低血糖、多血症、黄疸、電解質異常などが問題になります。
もともと糖尿病がある方や、妊娠中の明らかな糖尿病では、先天異常や母体合併症への配慮もより重要です。

治療の基本は食事療法です

妊娠糖尿病の治療の基本は、必要な栄養はきちんととりながら、血糖を上げすぎない食べ方に整えることです。
単なる食事制限ではありません。赤ちゃんの発育に必要なエネルギーや栄養を確保しつつ、血糖変動を少なくすることが大切です。

分食について

妊娠糖尿病では、1回にまとめて食べず、食事を分けてとる「分食」がよく勧められます
日本糖尿病学会の記載では、必要に応じて食事回数を増やす分割食が推奨され、生活リズムを考慮しながら1日5~6回程度に分ける方法が示されています。
日本産科婦人科学会の一般向け解説でも、1日4~6回に分けて食べることが紹介されています。

分食のメリット

分食には、次のような利点があります。

  • 1回の食後血糖の急上昇を抑えやすい
  • 空腹時間が長くなりすぎるのを防ぎやすい
  • 妊娠中のつわりや胃の圧迫がある方でも食べやすい
  • 必要な栄養を無理なく確保しやすい
分食の考え方

たとえば、朝・昼・夕の3食に加えて2~3回の補食を入れる形です。
日本糖尿病学会では、各食事を1日のエネルギーの25%前後、補食を5~10%程度の目安で配分する方法が紹介されています。
実際の内容は、体格、体重増加、血糖値、つわりの程度などで調整します。

どんな食事が勧められますか

炭水化物を極端に減らすのではなく、質と配分を工夫することが重要です。
日本糖尿病学会では、十分な食物繊維、低GI食品、必要に応じた分割食が勧められています。
海外では炭水化物を1日175 g以上確保する考え方も示されており、自己流で主食を抜きすぎないことが大切です。

血糖管理の目標

妊娠中の血糖目標として、空腹時95 mg/dL未満かつ食後1時間140 mg/dL未満、または空腹時95 mg/dL未満かつ食後2時間120 mg/dL未満が推奨されています。
実際の目標値は、主治医が母体と胎児の状態をみながら個別に決めます。

食事だけで難しいときはインスリン治療を行います

食事療法や生活調整だけで血糖管理が不十分な場合は、インスリン治療が行われます。
出産後には中止できることが多いです。

出産後もフォローが必要です

妊娠糖尿病は出産後に改善することが多いですが、それで完全終了ではありません。
分娩後6~12週に75g OGTTで再評価することが強く推奨されています。
その後も、空腹時血糖、HbA1c、必要に応じて75g OGTTなどで定期的に代謝状態を確認していくことが勧められます。

将来の糖尿病予防にもつながります

妊娠糖尿病の既往がある方は、将来2型糖尿病を発症しやすいことが知られています。
出産後も体重管理、食事、運動、健診継続が大切です。
母乳育児が将来の糖尿病リスク低下に関係する可能性も示されています。

こんなときは早めにご相談ください

  • 妊婦健診で血糖値異常を指摘された
  • 50g GCTが陽性だった
  • 75gOGTTを勧められた
  • 以前の妊娠で妊娠糖尿病があった
  • 糖尿病の家族歴がある
  • 産後の再検査をまだ受けていない

最後に

妊娠糖尿病は、早く見つけて、正しく管理すれば、母児ともに多くのトラブルを避けやすい病気です。
必要以上に怖がる必要はありませんが、「妊娠中だけのこと」と軽くみないことも大切です。
とくに、分食を含めた食事の整え方と、産後の再検査は重要です。産科と内科、必要に応じて管理栄養士が連携しながらサポートしていきます。

参考文献

  • 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024 第17章「妊婦の糖代謝異常」.
  • 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン 産科編2023.
  • 日本糖尿病・妊娠学会/日本糖尿病学会合同委員会. 妊娠中の糖代謝異常と診断基準の統一化について.
  • 日本産科婦人科学会. 一般の皆様へ「妊娠糖尿病」.
  • 妊娠糖尿病既往女性のフォローアップに関する診療ガイドライン 2023. 日本糖尿病学会ガイドライン2024引用.

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