1型糖尿病とは
1型糖尿病とは
1型糖尿病は、膵臓のβ細胞がこわれて、体の中でインスリンを十分につくれなくなる病気です。
インスリンは、血液中のブドウ糖を体の細胞に取り込ませるために欠かせないホルモンです。
これが不足すると、血糖値が高くなります。
多くは自己免疫が関わると考えられており、生活習慣の乱れだけで起こる病気ではありません。
多くの方で、インスリン治療が生命維持に必須です。
子どもだけの病気ではありません
1型糖尿病は小児に多いイメージがありますが、大人になってから発症することもあります。
また、日本では、急に発症するタイプだけでなく、ゆっくり進行する緩徐進行1型糖尿病も知られています。
最初は2型糖尿病のように見えても、経過の中でインスリンが必要になることがあります。
2型糖尿病との違い
2型糖尿病は、体質、加齢、体重増加、運動不足、遺伝などが重なり、インスリンの効きが悪くなったり、分泌が足りなくなったりする病気です。
これに対して1型糖尿病は、インスリンそのものが出なくなる、または著しく不足する病気です。
そのため、1型糖尿病では飲み薬だけで管理できることは少なく、基本はインスリン治療になります。
どんな症状が出ますか
発症時には、次のような症状がみられます。
- のどが渇く
- 水分をたくさん飲む
- 尿の回数が増える
- 体重が減る
- だるい
- 食べているのにやせる
- かすんで見える
1型糖尿病では、こうした症状が数週間から数か月で急に目立ってくることがあります。
特に子どもや若い方では、比較的急な経過で見つかることがあります。
注意が必要な状態 - 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
1型糖尿病では、インスリン不足が強いと糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)という危険な状態になることがあります。
口渇、多尿、体重減少、強いだるさに加え、吐き気、嘔吐、腹痛、速く深い呼吸、意識がもうろうとするなどが出ることがあります。
これは救急受診が必要なことがある緊急疾患です。
1型糖尿病は、発見時にDKAを伴って見つかることも少なくありません。
どのように診断しますか
糖尿病の診断自体は、血糖値やHbA1cなどをもとに行います。
さらに1型糖尿病が疑われる場合には、抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗ZnT8抗体などの膵島関連自己抗体や、Cペプチド(CPR)などを調べ、体の中のインスリン分泌がどのくらい残っているかを確認します。
急性発症、緩徐進行、劇症などの病型も重要です。
治療の基本
1型糖尿病の治療の中心は、インスリンを補うことです。
健康な人では、食事と関係なく少しずつ分泌されるインスリンと、食後に追加で分泌されるインスリンがあります。
治療でもこれに近づけるため、基礎インスリンと追加インスリンを組み合わせる方法や、インスリンポンプ(当院では現時点でのお取り扱いはありません)が使われます。
血糖測定とデバイスの進歩
最近は、リブレ2やG7といったCGM(持続血糖モニタリング)が広く使われるようになり、血糖の変動や低血糖の傾向を把握しやすくなっています。
さらに、CGMとインスリンポンプを組み合わせて自動調整するAID(自動インスリン投与)システムも普及してきています。
ADAガイドライン2026では、CGMは発症時から検討される重要な手段であり、AIDは1型糖尿病で有力な選択肢とされています。
日常生活で大切なこと
1型糖尿病は、薬だけでなく自己管理の力がとても大切です。
具体的には、次のようなことが重要です。
- インスリンを自己判断で中断しない
- 食事量に応じたインスリン調整を学ぶ
- 低血糖への対処を知っておく
- 発熱や感染症、食事がとれないときの対応を知る
- 学校や職場、家族と必要な情報を共有する
構造化された教育プログラムや、医師・看護師・栄養士・糖尿病療養指導士などを含むチーム医療は、1型糖尿病の管理に役立つとされています。
当院には管理栄養士が在籍しております。
低血糖にも注意が必要です
インスリン治療では、低血糖にも注意が必要です。
冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感、集中しにくさなどがサインです。
重症になると意識障害を起こすこともあります。
血糖を良く保つことは大切ですが、無理な厳しさより、安全に続けられる管理が重要です。
合併症を防ぐために
血糖コントロールを続けることは、網膜症、腎症、神経障害などの細小血管合併症や、将来の心血管病リスクを減らすうえで重要です。
定期的に、HbA1c、腎機能、尿アルブミン、眼科検査、足のチェックなどを受けることが勧められます。
1型糖尿病でも、長期的には腎臓や目、神経、心血管への影響に注意が必要です。
こんなときは早めに受診してください
次のような場合は、早めの受診が大切です。
- のどの渇き、多尿、体重減少がある
- 急に血糖が高くなった
- 吐き気、腹痛、嘔吐がある
- インスリンが打てない、食事がとれない
- 低血糖を繰り返す
- 「2型糖尿病」と言われたが、やせ型で急に悪化している
- 家族に1型糖尿病や自己免疫疾患がある
特に、吐き気・嘔吐・腹痛・深い呼吸・ぐったりするなどがあれば、DKAの可能性があり、急いで医療機関へ相談が必要です。
当院からのメッセージ
1型糖尿病は、毎日の自己管理が必要な病気ですが、適切なインスリン治療、血糖モニタリング、周囲のサポートによって、学業、仕事、運動、妊娠・出産を含め、さまざまなライフイベントと両立を目指せる時代になっています。
気になる症状がある方、診断されたばかりで不安な方、治療法を見直したい方はご相談ください。
参考文献
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes 2026. Diabetes Care. 2026.
- American Diabetes Association. Summary of Revisions: Standards of Care in Diabetes 2026. Diabetes Care. 2025.
- 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024.
- 日本糖尿病学会. 1型糖尿病はどのように治療するのか? 市民向け情報.
- 日本糖尿病学会. 糖尿病ってどんな病気? 市民向け情報.
- 日本糖尿病学会. 糖尿病合併症について. 市民向け情報.
- CDC. Type 1 Diabetes / Diabetic Ketoacidosis / Symptoms of Diabetes.
- NIDDK. Type 1 Diabetes / Symptoms & Causes of Diabetes.
- NICE. Type 1 diabetes in adults: diagnosis and management.
- ISPAD Clinical Practice Consensus Guidelines 2024.
