糖尿病関連腎臓病(糖尿病性腎症)とは
糖尿病関連腎臓病とは
糖尿病関連腎臓病は、高血糖が長く続くことで腎臓に負担がかかり、少しずつ障害が進んでいく病気です。
以前は「糖尿病性腎症」という言葉が主に使われてきましたが、最近は糖尿病関連腎臓病(DKD)という呼び方が広く使われています。
これは、典型的な「尿アルブミンが増えて進行するタイプ」だけでなく、尿蛋白が目立たなくても腎機能が低下するタイプがあることがわかってきたためです。
腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として出すだけでなく、血圧の調整、赤血球をつくる働きの補助、骨の健康に関わる役割も担っています。
そのため糖尿病関連腎臓病が進行すると、むくみ、血圧上昇、貧血、だるさなどにつながることがあり、さらに心筋梗塞や脳卒中などの心血管病のリスクも高まります。
糖尿病のある方にとって、腎臓のチェックはとても大切です
糖尿病があっても、初期の腎障害にはほとんど自覚症状がありません。
そのため、「症状がないから大丈夫」とは言えず、尿検査と血液検査で早めに見つけることが重要です。
KDIGOガイドライン2024 でも、CKDリスクのある人では尿アルブミンとeGFRの両方で評価することが勧められています。
ADAガイドライン2026でも、糖尿病のある方では尿アルブミンとeGFRを少なくとも年1回は確認することが示されています。
日本のガイドでも、糖尿病患者さんでは少なくとも半年に1回の尿アルブミン測定が勧められており、DKDと診断された後は、状態に応じてよりこまめな確認が必要です。
どんな検査をするのですか?
1. 尿アルブミン
尿にどれくらいアルブミンという蛋白が出ているかをみる検査です。
早期の糖尿病関連腎臓病では、通常の尿たんぱく検査では見つかりにくくても、尿アルブミン検査で早く異常が見つかることがあります。
一般に、30 mg/gCr未満が正常〜軽度、30〜299 mg/gCrが微量アルブミン尿、300 mg/gCr以上が高度アルブミン尿の目安です。
特に、微量アルブミン尿の時点で見つけることが、将来の心血管病や透析移行を防ぐ意味合いで大切です。
2. eGFR
eGFRは、腎臓がどれくらい血液をろ過できているかを表す指標です。
血清クレアチニン、年齢、性別などから計算され、数値が低いほど腎機能が低下していることを示します。
KDIGOでは、腎臓病の重症度をeGFRと尿アルブミンの両方で評価します。
3. 血圧
高血圧は糖尿病関連腎臓病を進める大きな要因です。
糖尿病がある方では、血圧管理も腎臓を守る治療の一部です。
ADAガイドライン2026では、糖尿病のある人の多くで130/80 mmHg未満を目標にすることが推奨されています。
どんな症状が出ますか?
初期には無症状のことが多く、健診や定期検査ではじめて見つかることが少なくありません。
進行すると、足のむくみ、疲れやすさ、息切れ、食欲低下、血圧上昇などがみられることがあります。
かなり進んでから症状が出ることもあるため、症状よりも検査が大切な病気です。
糖尿病関連腎臓病を防ぐ・進ませないために大切なこと
1. 血糖を整える
高血糖が続くほど、腎臓の細い血管に負担がかかります。
日本のCKD診療ガイドでは、HbA1c 7.0%未満を目安に管理することで、DKDの発症や進展を抑えることが期待できるとされています。
ただし、年齢、低血糖リスク、合併症などによって目標は個別に調整します。
2. 血圧を整える
糖尿病関連腎臓病では、血糖だけでなく血圧管理がとても重要です。
蛋白尿やアルブミン尿を伴う場合には、ACE阻害薬やARBが腎保護の面からよく使われます。
日本のガイドでも、蛋白尿を伴う高血圧ではこれらの薬が重要とされています。
3. 腎臓を守る薬を適切に使う
近年、2型糖尿病とCKDを合併した方では、SGLT2阻害薬が腎機能低下や心不全などのリスクを下げる薬として重要になっています。
ADAガイドライン2026では、eGFR 20 mL/min/1.73m²以上の2型糖尿病+CKD患者でSGLT2阻害薬が推奨されています。
また、フィネレノンのような非ステロイド型MRAは、2型糖尿病でアルブミン尿があり、標準治療を行っていてもリスクが残る方で、CKD進行や心血管イベントのリスク低下が期待されます。
4. 生活習慣を整える
減塩、禁煙、体重管理、運動も大切です。
KDIGOガイドライン2024では、CKDのある方に週150分以上を目安とした中等度の身体活動が勧められています。
無理のない範囲で、続けられる運動が大切です。
食事で気をつけること
食事は自己流で極端に制限するより、主治医や管理栄養士と相談しながら続けられる形にすることが大切です。
一般には、塩分のとりすぎを避けること、適正体重を目指すこと、血糖が上がりやすい食べ方を見直すことが重要です。
腎機能が低下してくると、蛋白質やカリウム、リンなどの調整が必要になることもありますが、段階によって違います。
こんなときは早めに受診しましょう
- 健診で尿たんぱくや腎機能低下を指摘された
- 糖尿病があり、しばらく尿アルブミンやeGFRを測っていない
- むくみ、血圧上昇、息切れ、だるさが続く
- 糖尿病の治療はしているが、腎臓については詳しく説明を受けていない(状況によって自費診療での医療相談やセカンドオピニオン外来での対応となることがございます)
糖尿病関連腎臓病は、早めに見つけて、血糖・血圧・薬物療法・生活習慣を整えることで進行を遅らせられる可能性がある病気です。
透析が必要になる前の段階で介入することがとても大切です。
まとめ
糖尿病関連腎臓病は、糖尿病のある方にとってとても重要な合併症のひとつです。
初期は症状が乏しいため、尿アルブミンとeGFRを定期的に確認することが早期発見につながります。
治療の柱は、血糖管理、血圧管理、腎保護作用のある薬の活用、生活習慣の見直しです。
「血糖だけ」ではなく、腎臓も一緒に守ることが、将来の透析予防や心血管病予防につながります。
参考文献
- Standards of Care in Diabetes-2026.
- KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney International (2024) 105 (Suppl 4S), S117–S314.
- 日本腎臓学会. CKD 診療ガイド 2024.
