季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
当院では花粉症に対してのステロイド注射は行っておりません
花粉症とは
日本人の約10~15%が花粉症だといわれています。
毎年、関東地方では2月~5月(ゴールデンウィーク頃)までスギ花粉が飛散します。
花粉の量は多い年・少ない年がありますが、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・眼の痒み等が主な症状です。
昨年までは花粉症でなくても、突然発症する事もありますので、風邪か花粉症か区別がつきにくい場合もあります。
症状が出始めたら初期治療が大切ですので、医療機関を早めに受診し、適切な治療を行うことが症状の悪化を防ぐことになります。
自分でできる対策
この症状、花粉症?
<セルフチェック>
花粉症の主な症状は風邪と似ています。
症状をチェックしてみましょう。
質問 | A | B |
Q1. 熱はありますか? | 熱はない又は微熱 | 熱がある |
Q2. どんな鼻水ですか? | 透明でサラサラ | 最初は透明でサラサラ、だんだんと黄色くネバネバに |
Q3. 目のかゆみがありますか? | かゆく、涙も出る | ほとんどない |
Q4. 鼻づまりはありますか? | 完全につまることも | それほどでもない |
Q5. 症状はどれくらい続きますか? | 毎年同じ季節 | 季節不定で、長くても一週間 |
上記のチェックで「 A 」が多いほど、花粉症の可能性が大きいです。
花粉症の場合には、上記項目以外にのどのかゆみ・痛みあるいは顔や皮膚のかゆみが起こることもあります。
適切な対策と症状にあった治療を早めに開始しましょう。
発症後に自分でできること
<シーズン中に>
花粉情報をチェックする
花粉情報を活用し、吸入阻止の対策を立てるのに役立てましょう。
服装など、生活上での注意をする
(外出するとき)
マスク・メガネ・帽子を着用しましょう。
花粉が付着しやすいウールなどの上着は避けましょう。
(帰宅したら)
玄関に入る前は洋服や顔に付着した花粉を落とし、洗顔やうがいで花粉を洗い流しましょう。
(家の中では)
掃除をこまめに行い、洗濯物や布団を取り込む前には花粉をよく落としましょう。
(生活では)
睡眠を十分にとり、ストレスをためないように心がけましょう。喫 煙や飲酒・刺激のある嗜好品はとらないようにしましょう。
◆症状を軽くするために、吸い込む花粉の量を少なくすることを心がけましょう。
花粉症の一般的な検査や治療
血液検査
アレルギー検査39項目セット「View 39」
View39とは、主要な39種類のアレルゲンに対する特異的IgE抗体検査が、一度の少量の採血でできる新しいアレルギー検査です。
症状の原因となっているアレルギーを知ることで、対策や治療の助けになります。
特異的IgE抗体検査とは
特異的IgE抗体検査は、血液中に特定のアレルゲン(原因物質)に対するIgE抗体があるかどうかを調べる検査です。
IgE抗体は、体内にアレルゲンが入ってから短時間で症状を引き起こす即時型アレルギー反応の原因となる抗体です。
主に花粉症や食物アレルギーの発症に関与していると考えられています。
この検査を行うことで、どのアレルゲンによって症状が出るのか、アレルギー疾患の治りやすさ、食事制限や環境対策が必要かなどがわかります。
問診でアレルゲンを推定できない場合や、学童期以降のアトピー性皮膚炎の方などに有用な検査です。
View 39の検査項目
View 39の費用
View 39は、医師によりアレルギーがあると認められた場合は保険適用の対象となります。
その費用は3割負担で5,000円ほどです。
なお、症状が認められない場合は自費診療による検査になり、費用が15,000円ほどになります。
治療
初期療法
花粉症は、特定の花粉に対するアレルギー反応が原因で引き起こされる一般的な疾患です。
症状には鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどがあり、毎年多くの人が苦しんでいます。
花粉症の治療には様々な方法がありますが、特に初期療法は非常に有効です。
初期療法の鍵は、自身のアレルギーの原因となる花粉の種類を知ることです。
たとえば、スギ花粉症の場合、通常は2月から花粉が飛び始めるため、その約2週間前、つまり1月中旬から下旬にかけて予防的に薬を服用することで、症状を抑えることができます。
この予防的な内服は、花粉が飛び始めてから薬を飲み始めるよりも、症状の発現をより効果的に抑えることが可能です。
初期療法に使用される薬には、抗ヒスタミン薬、ステロイド含有の点鼻薬、点眼薬などがあります。
これらの薬は、花粉によるアレルギー反応を抑え、症状の発生を予防する効果があります。
また、個々の症状やアレルギーの重症度に応じて、最適な薬を処方します。
対症療法(お薬による治療)
花粉症の症状は鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみなど多岐にわたりますが、これらの症状に対する治療法としては、薬物療法が一般的です。
症状の種類に応じて、異なる種類の薬が処方されます。
例えば、鼻水やくしゃみが主な症状の方には、抗ヒスタミン剤が効果的です。
これはアレルギー反応によって生じるヒスタミンの作用を抑えることで、症状を和らげます。
一方、鼻づまりが主な症状の方には、ロイコトリエン受容体拮抗薬やトロンボキサンA2受容体拮抗薬などが用いられます。
これらの薬は、炎症やアレルギー反応に関わる物質の作用を抑制し、鼻の通りを良くする効果があります。
加えて、点鼻薬や点眼薬の併用も一般的です。
点鼻薬は直接鼻の粘膜に作用し、鼻の不快感を軽減します。
点眼薬は目のアレルギー症状を和らげる効果があります。
ステロイドの注射(ケナコルト-A®)について
「1回の注射で花粉症がよくなる」などと謳われているものはこの治療法である可能性があります。
「ケナコルト-A®」は長く効くステロイド薬で、花粉症に対して使用する際には大量のステロイドをスギ花粉飛散時期に投与して数ヶ月効果を持たせようという治療法となります。
1回の投与で症状を軽くできる方もいるため、手軽に見えます。
「ケナコルト-A®」の筋肉注射を1回行うと、注射部位からゆっくり継続して体内へ放出、吸収され、3~4週間程度連続で作用し続けます。
一度注射してしまうと、体の外に取り除くことができないので、副作用は持続し、悪化してしまうことになりかねません。また、ステロイドの効果を遮断する薬も存在せず、薬が体から消えていくのを待つのみとなってしまいます。
ゾレア皮下注射療法
2020年より、重症・最重症のスギ花粉症に対して、抗IgE抗体治療薬であるゾレア(一般名:オマリズマブ)を皮下注射する治療を行うことができるようになりました。
スギ花粉症によるくしゃみ・鼻みずがとまらない・鼻がつまるといった鼻炎症状が飲み薬、点鼻薬などでもおさまらない方、また、内服薬の眠気が強く、より強力な効果が期待できる薬剤に変更・増量できないために鼻炎症状がおさまらない方にとっては、検討する価値の高い治療です。
治療の対象となる方
- 重症または最重症の花粉症で、前スギ花粉シーズンでも重症な症状があったこと。
* 重症または最重症とは、「1日のくしゃみあるいは鼻かみの回数が11回以上」あるいは「鼻づまりがひどく1日中、あるいはかなりの時間口呼吸をしている」場合を言います。 - スギ花粉のアレルギー検査(スギ特異的IgE値)の結果がクラス3以上であること。
- 花粉症の既存治療(抗ヒスタミン薬の内服とステロイド含有の点鼻薬による治療など)を1週間以上行い、効果が不十分であったこと。
- 12歳以上で、血清中総IgE濃度が30〜1,500 IU/ml、体重20~150 kgの範囲にあること。
以上の条件をすべて満たす方がゾレアによる治療の対象となります。少しハードルが高い薬剤ですが、副作用が多くて危険であるからという理由ではなく、薬価が高い薬ですので乱用を防ぎ適正使用を促す為です。
治療の流れ
ゾレア投与前に、(1)既存治療薬での治療、(2)血液検査(アレルギー検査)が必要になります。
- 1回目受診
①問診を行い、重症または最重症のスギ花粉症であることを確認します。
②既存治療(抗ヒスタミン薬と点鼻薬等)を開始します。期間は1週間以上です。 - 2回目受診
①既存治療の効果がみられなかったこと(不十分であること)を確認します。
②採血を行い、スギ特異的IgE値、総IgE値を測定します。
③数日後に採血結果を受けて、お電話にて、ゾレアの投与が可能かどうか、投与量と投与間隔、料金についてご説明します。 - 3回目受診
①ゾレアの注射による投与を行います。
②併用する抗ヒスタミン薬の処方を行います。 - それ以降
スギ花粉飛散時期(概ね2月~5月)内で、2週間または4週間毎に投与を行います。
注意事項
ゾレアは体重と血清中総IgE値によって投与量が決まります。
血清中総IgE値が高く、体重が重い方はより多くの注射を必要とする計算です。
よって、体重がより重い方は総IgE値が1,500IU/mL以下であっても必要投与量が限界量を超えてしまうことにより、使用できないことがあります。
主な副作用は、注射部位の赤み・かゆみ・腫れです。
また、わずかながらアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるため、初回投与後は院内で30分間待機して頂き経過観察を行います。
料金
項目 | 料金 |
薬剤費 | 約4,500円〜70,000円 (1ヶ月あたり、3割負担の場合) |
*投与量によって金額が変わり、月に9,000円から18,000円の方が最も多いです。投与量は、血清中総lgE値と体重に基づき決定されるので、患者さんごとに異なります。
*その他、受診、検査にかかる費用、同時に服用し続ける必要のある抗ヒスタミン薬の処方費などがかかります。
*下記サイトから治療費のシュミレーションができますのでご参照ください。
治療費が高額になった場合は、高額療養費制度によって医療費の一部が払い戻される場合があります。
また、医療費控除によって税金が安くなる場合があります。
小児は12歳以上が適応ですが自治体によってはこども医療費などの医療費助成が受けられます。
既存の治療法の効果がみられず、大変苦しい花粉飛散時期を過ごされる方にとっては福音となる可能性がある治療です。
毎年スギ花粉症の時期に大変な思いで過ごされる方は血液検査を行い、投与が可能か、投与量、料金などを調べておくことによってスムーズに花粉飛散期を迎えることができます。
舌下免疫療法(シダキュア®、ミティキュア®)
舌下免疫療法とは
アレルギーの治療法の一つに、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少しずつ体内に取り込むことでアレルギー反応を弱めていく、アレルゲン免疫療法があります。
「舌下免疫療法」はアレルゲン免疫療法の一種であり、アレルゲンを含んだお薬を毎日舌下内服することで、アレルギー反応を完治・改善させることが期待できます。
現在は、「スギ花粉症」と「ダニアレルギー性鼻炎」に対する舌下免疫療法用のお薬を使用することができます。
治療には3~5年間、毎日お薬を飲み続けないといけませんが、根治を目指すことができる唯一の治療法となります。
治療の対象となる方
- アレルギーのお薬を使用しても症状が改善しない方
- アレルギーのお薬を減らしたい方 または、眠気などの副作用でアレルギーのお薬を使用しづらい方
- 毎日の服薬と定期的な通院が可能な方
舌下免疫療法の効果
治療を受けられた約80%の方に効果があると言われており、約20%の方はアレルギー症状が消失(根治)し、約60%の方は症状が改善するとされています。
一方で、約20%の方には効果がみられなかったとも報告されています。
治療の流れ
当院では3つのステップで診療を行います。
- 診察・検査
まずは治療開始前に、スギ花粉症もしくはダニアレルギーである診断が必要となります。
当院では血液検査でスギ、ダニに対する抗体が検出されるかどうかをチェックし、抗体が陽性の場合に治療の対象となります。
*検査費用は3割負担で約6,000円です。検査結果が出るまでに約1週間かかります。
すでに別の医療機関での血液検査でスギ花粉症と診断されている場合は、当院での検査は不要となりますので、1年以内の検査結果をご持参ください。 - 初回治療
初回の服薬は処置室で行います。
服薬後にアレルギー反応などの副作用が出ないかを確認するために、院内で30分間待機していただきます。
異常がない場合、翌日からはご自宅で1週間服用を継続します。 - 継続治療
初回服薬から1週間後に受診していただき、ご自宅で問題なく服用出来たかを確認します。
その後、大きな問題がなければ1ヵ月毎に受診していただきます。
服用方法
1日1回1個を舌下投与します。
舌下投与後は1分間はつばを飲み込まず、保持します。
飲んだ後は5分間はうがいをせず、飲食を控えましょう。
注意事項
- 治療は少なくとも3~5年間継続していただく必要があります。
- スギ花粉の舌下免疫治療の開始時期は、6月~12月の間になります(花粉の量が多い時期に治療を開始するとアレルギー症状が強く出る可能性があるため)。
*ダニアレルギーの治療の開始時期には制限はありません - 重度の気管支喘息、悪性腫瘍、自己免疫性疾患、免疫不全症を合併している方や、全身性ステロイド薬や免疫抑制剤を使用中の方、重症の心疾患・肺疾患の方、妊婦中・授乳中の方は治療を受けることができません。
副作用
- 口の中の腫れ・かゆみ・不快感・違和感
- 唇の腫れ
- のどの刺激感・不快感・違和感
これらの副作用は高頻度で出現しますが、時間経過とともに改善していきます。
重大な副作用として、 - ショック
- アナフィラキシー
の二つが挙げられます。
これらの副作用の内容や出現時のご対応については非常に大切な内容になるため、治療開始前にご説明させていただきます。
料金
初回服薬から1週間後、その後は毎月1回診察を受けていただきます。
項目 | 診察+薬剤費 |
スギ花粉(シダキュア) | 約2,000円 (1ヶ月あたり、3割負担の場合) |
ダニアレルギー性鼻炎(ミティキュア) | 約2,500円 (1ヶ月あたり、3割負担の場合) |