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百日咳と百日咳ワクチンのお話

[2025.04.17]

咳をする人のイラスト(女性)子どもを中心に感染し激しいせきが続く「百日咳」の流行が続いていて2025年4月6日までの1週間に全国の医療機関から報告された患者数は722人と、先週に続き、2週連続で過去最多を更新したようです。

百日咳とは

百日咳(pertussis, whooping cough)は、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症です。
母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6カ月以下では死に至る危険性も高いとされます。

百日咳の原因菌と感染経路

グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染によりますが、一部はパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)も原因となります。
感染経路は、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染、および接触感染です。

百日咳の臨床経過

臨床経過は3期に分けられます。

  1. カタル期(約2週間持続):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります。
  2. 痙咳期(約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳(痙咳)となります。これは短い咳が連続的に起こり(スタッカート)、続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出ます(笛声:whoop)。
    しばしば嘔吐を伴います。
    発熱はないか、あっても微熱程度とされます。
  3. 回復期(2、3週~):激しい発作は次第に減衰し、2~3週間で認められなくなりますが、その後も時折忘れた頃に発作性の咳が出ます。全経過約2~3カ月で回復します。
    成人の百日咳では咳が長期にわたって持続しますが、典型的な発作性の咳嗽を示すことはなく、やがて回復に向かいます。
    軽症で診断が見のがされやすいですが、菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として注意が必要です。

百日咳の治療

百日咳菌に対する治療として、マクロライド系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬が用いられます。
これらは特にカタル期では有効です。一方で痙咳期に至ると抗菌薬の効果は乏しいとされます。
通常、患者さんからの菌排出は咳の開始から約3週間持続しますが、適切な治療により、抗菌薬服用開始から5日後には菌の分離はほぼ陰性となります。
耐性菌の出現を防ぐため、原則として感受性を確認し疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめることが推奨されます。

百日咳の予防とワクチン

予防では、ワクチンが最も重要です。
世界各国がEPI(Expanded Program on Immunization:予防接種拡大計画)ワクチンの一つとして、DPTワクチンの普及を強力に進めています。
当院では百日咳ワクチンとして三種混合(DPT)ワクチンであるトリビック®を採用しています。

2018年および2019年の感染者報告によると、百日咳に感染した人のうち6割以上が小中学生のこどもたちでした。
また、感染者のうち約8割の人が小児期に4回の三種または四種混合ワクチンを接種していました。
つまり、定期接種で三種または四種混合ワクチンを接種しても数年で免疫が低下してしまうようです。
そのため、百日咳を予防したい方、特に妊婦(妊娠希望女性)の方は生まれてくる子ども(乳児は百日咳に罹患すると呼吸不全などで致死的となりうるため)の感染予防のために接種をお勧めします。
妊娠中、一般的には妊娠27週~妊娠36週の接種が勧められるようですが、妊婦での安全性はまだ証明されておらず、当院で接種を希望される妊娠中の患者さんは、通院中の産科に接種の可否を必ず確認した上でお申し込みをお願いいたします。

参考:百日咳. 国立健康危機管理研究機構 感染症情報サイト(https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/pertussis/010/pertussis.html)

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