2023/06/11 第35回日本緩和医療学会教育セミナーで腎不全患者の緩和ケアに関する講演を行いました
2023年6月11日に第35回日本緩和医療学会教育セミナーで「腎不全患者の緩和ケア」と題した講演を行いました。
https://www.jspm.ne.jp/seminar/education/individual.html?entry_id=1140
- 腎不全と予後の推定
- Advance care planning(ACP)と意思決定支援
療法選択とShared decision making(SDM)プロセスの大切さ - 緩和ケアと腎代替療法
- 透析の見合わせに際しての注意点
- 保存的腎臓療法(CKM)の概念
- 腎不全患者の苦痛への対処
について、900名を超える医療従事者を対象にお話ししました。
質疑応答では聴講された方より多くのご質問をいただき、「腎不全×緩和ケア」は、大変注目を集めている領域であると認識しました。
一般に、心不全や肝硬変などの慢性臓器不全では、図のような急性増悪と寛解を繰り返し、徐々に日常生活動作(ADL)の低下をきたすことが知られています。
一方で、同じ慢性臓器不全である腎不全(透析をしていない保存期腎不全)は、上記の疾患群とは異なり、血液透析などの腎代替療法(腎臓の役割を肩代わりする治療)が必要な状態に至る直前まで、苦痛な症状が出にくいことが特徴です。
苦痛が出現するほど腎不全が進んだ場合は、透析などの腎代替療法を実施することで、腎不全による苦痛は消失し、併せて予後の改善も一般に期待できます。
腎代替療法には以下の3つがあります。
- 血液透析(HD)
- 腹膜透析(PD)
- 腎移植
患者さんの生活スタイルや嗜好、病状等に合わせて、これらの治療が必要になる前から、治療の概要や選択について話し合いを重ねていきます。
血液透析は、患者さんの血液を透析回路に通し、老廃物や余分な水分を除去する治療法です。
大変優れた治療法ですが、一般に週3回、1回4時間の治療を透析クリニックで継続的に行うことが必要であり、療法そのものによる生活上の制限があるのも事実です。
お仕事や通院利便等の面で継続的な血液透析が難しい患者さんには、腎移植のほか、自宅等で治療が完遂できる腹膜透析が適している可能性があります。
しかしながら、複数の臓器にわたる重篤な疾患がある場合など、患者さんの状態によっては、腎代替療法を導入しても予後の改善がそれほど見込めないシチュエーションもありえます。
その場合は、患者さんやご家族との話し合いの中で、透析などの腎代替療法を実施せずに、腎臓の機能を長持ちさせる治療と、苦痛が出た場合の緩和ケアなどを並行して行う保存的腎臓療法(CKM)が選択されることがありますが、このCKMは近年大変注目を集めています。
浦安ツバメクリニックでは、血液透析は実施できませんが、腎代替療法に関するご相談や、必要時腎移植施設へのご紹介、腹膜透析管理、保存的腎臓療法の提供などが可能です。
お気軽にご相談ください。