INTENSIVIST 2023年3号(Critical care nephrology)に寄稿しました
メディカル・サイエンス・インターナショナル(MEDSi)社より先日発刊された、INTENSIVIST 2023年3号に、「ICUにおける尿検査:各検査の有用性とその理由」と題した原稿が掲載されました。
INTENSIVIST誌とは
「世界標準の集中治療を誰にでもわかりやすく」をコンセプトに、若手医師の育成や情報交換を目的として発足した「日本集中治療教育研究会」(Japanese Society of Education for Physicians and Trainees in Intensive Care=JSEPTIC)の活動をベースに、年4回発行される雑誌です。
毎号1つのテーマを決め、最新のエビデンスに基づいて、現在わかっていること/わかっていないことを検証、徹底的に解説することがコンセプトとなっており、今回は「Critical care nephrology」がテーマでした。
Critical care nephrologyとは
1998年、オーストラリアの集中治療医intensivistであるR.Bellomoとイタリアの腎臓内科医nephrologistであるC.Roncoにより提唱され、急性腎障害(AKI)を含む多様な腎疾患を合併した重症患者に対する集学的なアプローチを強調したものです。
集中治療室(ICU)でのAKI診療はこれまで主に集中治療医と腎臓内科医により支えられてきましたが、重要なのはどちらが主導権を握るかではなく、両者の強みを互いに理解し協働していくことであると考えられています。
私が現在非常勤医師として勤務している東京ベイ・浦安市川医療センターにもICUがあり、AKIをきたした患者さんの原因究明や、一時的に透析が必要になった患者さんの透析管理などを、腎臓内科医は集中治療医と協働して行っており、まさにCritical care nephrologyを実践しています。
原稿の内容
尿生化学検査について
尿中には、血液中のナトリウムや尿素窒素(BUN)などが排泄されます。
尿中のそういった物質を測定し、血液中のそれらと比較する、FENaやFEUNという指標を用いて、腎臓の尿濃縮能を分析し、腎障害の原因にアプローチします。
尿沈渣について
AKIなど腎障害では、様々な物質が尿中に漏れ出てきます。
そういった物質を顕微鏡を用いて観察することで、どのような原因で腎障害が起きているのか評価することができます。
浦安ツバメクリニックでも必要に応じて実施しています。
尿バイオマーカーについて
腎障害で様々な物質が尿中に漏れ出てきますが、一部の蛋白質は尿バイオマーカーとして発見され、臨床応用に期待されています。
これらのマーカーを測定することで、腎障害の原因の鑑別だけではなく、腎障害を起こすリスクや、透析必要性などの予後を推定することができるとされます。
こちらも浦安ツバメクリニックで必要に応じて測定することが可能です。
ICUにおけるクレアチニンクリアランスなど腎機能評価の工夫
腎機能を正確に評価するためには、一般的に24時間蓄尿によるクレアチニンクリアランスが広く用いられています。
ただ、ICUセッティングでは煩雑であり、刻一刻と状態が変化するICU患者さんではより短時間の蓄尿検査が実施されることがあります。
その特徴について解説を行いました。
医療者向けの内容のため、専門用語が多く用いられており、一般の方にはやや読みづらいものとなっておりますが、浦安ツバメクリニックの待合室に設置してあるマガジンラックに置いてありますので、診療の待ち時間などに手に取っていただけたらと思います。